作品No.9

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竹を編む
1960/絹絵/富山コレクション
グエン・ファン・チャン/1960

ベトナムにおいて、絹絵は20世紀はじめに生まれたジャンルで、それまでは宗教画や指導者層などの肖像画にその技法は使われていた。グエン・ファン・チャン(1892-1984)は、その絹絵の題材を“ベトナムの日常生活”にとった絹絵の分野の開拓者であり、大家として活躍した。本作品も、グエン・ファン・チャンらしい、詩情をおびた、柔らかい落ち着いた色調で、働く少女たちが描かれている。

リエン嬢
1962/漆絵/ベトナム国立美術館
フィン・ヴァン・ガム/1962


この作家は革命を主題にした作品と家族や女性を描いた。漆で描かれる肖像画は余り多くないとのことである。逆光で顔の大部分が暗く表現され、光のコントラストが面白い。また、少し物憂げに座るアオザイを着たこの女性像は、大変印象深い。この作品は国外でも紹介される機会が多く、漆絵の代表作として高く評価されているという。

少女と銃と鳥
1972/油彩、新聞紙/個人蔵
チャン・チュン・ティン/1972


チャン・チュン・ティンは戦争の激しくなる南ベトナムで、新聞紙に油彩で少女の姿にいろいろな思いを託し、独自の画境の作品を切り開いた画家である。銃は暗い戦いの日常や現実を、そして小鳥を慈しむ様子は、そんな状況に置かれても優しさや愛情を忘れない、さらには守るべきものへの想いなどが象徴されているようにも見てとれる。

子どもたちに囲まれたホーおじさん   1960/漆絵/ベトナム国立美術館
ホアン・ティチ・チュ/1960

ベトナム建国の父にして英雄、ホー・チ・ミンは、「
Vac Ho」(直訳すると「ホーおじさん」)と国民から敬愛をこめて呼ばれている。また、ベトナムの年間行事として、旧暦8月15日は中秋節のお祭りがある。子どもたちのお祭りで、ちょうどこの絵のように、獅子舞があったり、ちょうちんを持ち歩いたりする。本図は、お祭りをともにたのしむ子どもたちに慕われる「ホーおじさん」をテーマとしているが、子どもたちがそれぞれ生き生きと描写されている