(創作ねんどアニメーション)
昔むかし、はやてという鬼がいました。その鬼は風のように人里に現れ、家々を
焼き払い人々を苦しめるそれは恐ろしい鬼でした。
ある日のことです。焼け野原に一人だけ生き残った者がいました。赤ん坊でした。
はやてがその赤ん坊を取って喰おうとすると・・・・・赤ん坊はにっこり笑いました。
その笑顔を見てはやては、「ヘン!でっかくしてから喰ってやる!」そう言って赤
ん坊を連れて山へ帰っていきました。以来、はやては赤ん坊と一緒に暮らし始め
ました。赤ん坊は鬼が食べるような生肉は食べませんので、仕方なく赤ん坊のた
めに、はやては木の実を拾い、畑を耕しました。赤ん坊が大きく育っていくうちに、
はやての心は次第に優しくなっていきました。
ある日、赤ん坊が病気になると、はやては何日も夜も眠らず看病しました。ある
朝赤ん坊の病気が治ると、はやてのつのがコソリと落ちました。はやてはもう鬼で
はなくなりました。人間のおじいさんになっていたのです。それから何年か過ぎま
した。赤ん坊はすでにりっぱな若者に成長し、はやてのつので作った笛を持って、
旅に出かけました。
はやての発想は能の般若面のあやしさから、狂言の武悪面ののどかさ、大らか
さにつなぐドラマはできないかということでした。般若面が微妙に崩れていって武
悪面で終わる、ことばでは簡単ですが、美術的には大変なことでした。
そこで考えられたのが、ウノ・カマキリ氏案のネンドを素材とする方法でした。
ネンドの混ぜ具合でさまざまな色彩が作られ、動かすことは自由なのですが、逆
にネンドは熱に弱く、ライトをあびるととろけたり、くずれたり欠点がありました。
はやては総計20体くらい作られましたが、ほとんどのはやてはアニメで動かし
たため、現存するのはわずかです。映像の中にいるだけです。消えたはやては
懐かしく思い出されます。
(1978年作品。製作・監督 盛善吉。15分、カラー。)
○ 貸出料 VTR・カラー … 5,000円